Transmission Control Protocol

 

「SYN」
「ACK」
さわやかな接続の挨拶が、混みきったセグメントにこだまする。
ARPA様のお庭に集うパケットたちが、今日も天使のような無垢なTTLで、
高価なゲートウェイをくぐり抜けていく。
下位レイヤを知らないデータを包むのは、幾重ものヘッダ。シーケンス番号は
乱さないように、経路上のノードは輻湊させないように、ゆっくりスタートするのが
ここでのたしなみ。
もちろん、ウィンドウサイズギリギリで帯域を占有するなどといった、はしたない
TCPスタックなど存在していようはずもない。

Transmission Control Protocol。
1982年確立のこのプロトコルは、もとは軍のネットワークのためにつくられたという、
伝統あるストリーム系プロトコルである。
インターネット。シリアル通信の面影を未だに残しているデータ損失の多いこのネットワークで、IETFに見守られ、
フレームリレーからWDMまでの一貫接続がうけられる通信の要。
時代が移り変わり、大統領がレーガンから三回も改まった平成の今日でさえ、
十八ヶ月で性能を倍化させ続ければ電話屋育ちの純粋培養プロトコルが棺入りで出荷される、
という仕組みが未だに残っている貴重なプロトコルである。

 

 

 



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